
「低密度なまち、蛮行の庭園」
昨年「神社と氏子域」についてご登壇いただいた小南弘季さんをお迎えし、
現在進行形のフィールドワーク「低密度なまち」についてお話しいただきます。
「低密度なまち」とは、集落ではないが都市でもない、その中間に広がる地域を指します。
総務省の標準地域メッシュ(約1km四方)において、人口が1,000〜2,000人で、かつ人口2,000人以上の地域に隣接していない場所。
日本には約1,700か所存在するといわれています。 小南さんはこれまでに約50の地域を実際に歩き、観察し、その記録をまとめています。
こうした場所は、しばしば「過疎」「発展から取り残された地域」として語られがちです。
しかし小南さんは、それらを別の視点から捉えます。
都市のように計画され管理された風景とは異なり、
低密度なまちは、その土地固有の自然環境と隣り合うことで生まれる“余白”を持っています。
そこには、均質化された都市にはない、美しさや豊かさが息づいています。
また、その風景はただ「見る」ものではなく、坂を下る、風に目を細めるといった身体の感覚を通して初めて立ち現れます。
いわば「絵葉書にならない風景」——身体ごと関わることで意味を持つ風景です。
さらに興味深いのは、風景の成り立ちです。
都市では空間は専門家によって設計されますが、
低密度なまちでは、庭づくり、放置された物、侵入してくる植物など、あらゆるものが風景の一部となります。
誰もが無意識のうちに風景の担い手となる——そんな「参与可能性」がそこにはあります。
小南さんは、この研究のキーワードとして 「身体性」「寓喩性」「参与可能性」 を挙げています。
そしてここから導かれるイメージとして提示されるのが、「蛮行の庭園」という言葉です。
これはブラジルのトロピカーリア運動に由来し、豊かな自然と暴力性、雑多な要素が並存する状態を指す概念です。
多様なものが混在し、自然と人間の営みがせめぎ合いながら共存する風景。
それはまさに、日本各地に点在する「低密度なまち」と響き合うものではないでしょうか。
遠く離れたブラジルと日本を結ぶ、この詩的な視点もまた、小南さんのフィールドワークの魅力のひとつです。
本研究は、「豊かさとは何か」を問い直す試みでもあります。
利便性や効率といった都市的な価値軸ではなく、身体・記憶・関わりといった別の尺度から風景と暮らしを見つめ直すこと。
それは、建築や都市の話であると同時に、 私たちはどのように生きるのかという問いにもつながっているのだと思います。
日時:5月17日(日)14時〜16時
会場:カフェおきもと
〒185-0033 東京都国分寺市内藤 2-43-9
国立駅より徒歩8分 駐車場8台 あり
HP→https://www.cafeokimoto.com/
参加費:一般2,000円(ワンドリンク込み)当日会場にて精算
学生1,000円(ワンドリンク込み)当日会場にて精算

▪️講師プロフィール
小南弘季(こみなみ・ひろき)
1991年兵庫県生まれ。東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。
博士(工学)。2020年より2026年まで東京大学生産技術研究所助教。
著書に『東京の神社と氏子域』(鹿島出版会、2026)、
共訳書にハリー・F・マルグレイブ『EXPERIENCE:生命科学が変える建築のデザイン』(鹿島出版会、2024)がある。
現在は低密度居住地域の社会空間史研究、ブラジルの近代建築史研究に従事。
主催:A&ANS(ART & ACADEMIA NETWORKING SERVICE)
